起債本数は激減した。3月期決算企業の株主総会シーズンに入ったためである。数字だけで見ると、財投機関債等の公共債セクターが本数・金額ともに大きく、民間セクターとしては、地銀劣後債と住友ゴム工業債くらいなものである。日本高速道路保有・債務返済機構の財投機関債は、最近、味をしめたのか2年債500億円・10年債300億円ともイールドダッチ方式による条件決定である。同機構のように意味を理解しメリット・デメリットの存在を認識している確信犯として取組んでいるならまだしも、一部の地方公共団体や公的セクターのように、公開入札が最適条件の絶対条件だと信じ込んでいることも珍しくない。入札参加者が限定されていたり、固定されていたりした場合には、入札が不適切な結果になる可能性もあることを留意しておくべきだろう。
いまだに2005年、2008年のTHOMSON DealWatchや日経による起債受賞をHPで鼓舞している日本高速道路保有・債務返済機構の財投機関債には、募集金額で及ばなかったが、都市再生機構による都市再生債券の募集は、3年債・5年債・10年債の3本立てであった。当初の募集予定額は、3年債300億円、5年債50億円、10年債100億円の計450億円であったが、最終的には、3年債350億円、5年債100億円、10年債150億円と計600億円にまで膨れている。両機構の募集とも、2年債や3年債といった短期債の比率が半分以上を占めていることに注意したい。金利上昇懸念があるなら、こういった短期重視の調達は行わない。単純に負債の調達コストを下げると入っても、2年ないし3年で再度借り替える必要が生じることを考えると、当面、金利は上昇し難いと考えているのであろう。
都市再生機構は事業仕分けにおいても、その事業の一部を民間に任せるべきではないかとの指摘があった機構であり、前身の住宅公団の時代から大きく住宅事情が変化しているのに、必ずしも時勢に沿った展開が出来ていないのも事実である。確かに、高品質住宅やCM展開等の変化は見られるものの、基本の賃貸・分譲といったビジネスは変わっていない。既に民間で十分に大体できるという指摘も無理はなく、過去において仕入れた土地の価格下落等で巨額の損失を抱えたこともある。
今回の起債では、スプレッドが3年債で国債対比+11bps、5年債で同対比+10bps、10年債で同対比+9bpsと、年限とは逆相関の関係にある。3年債では利回りが低くなり過ぎたのもあるし、募集額がもっとも大きかったということもあろう。それでも、R&I及びJCRでAA格と、財投機関債発行団体としては必ずしも高くない水準の格付けでありながら、ここまでタイトなスプレッドというのは正直違和感がある。投資家の購入意欲が強かったのであろう。